平成18年度は、以下の作業を行った。 1.「郵便報知新聞」の国会開設前後の啓蒙記事の収集と整理。 2.国会・会議・議論に関する啓蒙文献の収集と整理。 3.国会未来記系統の政治小説を中心にした小説の収集と調査。 4.成田山仏教図書館等でのお伽噺文献の調査。 今年度は特に、国会開設に向けて、議論とそれによる意志決定という新しいコミュニケーション形式を、どのような先行寓話の形式を借用しつつ、啓蒙していったのかを調査した。旧来の談話、対話の形式を持った表現形式の借用による議会の理解の試みが見られ、必ずしも国会を舞台とした設定ではないものも多かった。例えば、西村天囚『屑屋の籠』は、馬琴の『昔語質屋庫』のパロディだが、登場する擬人化された屑物たちが、相互に議論を戦わせる展開であり、その議論の方法も、当時の議論に関する作法書に則っている。今回は改進党系の文献を中心に調査したが、その他に八戸青年会等各地の青年会組織に、議論のレッスンを実際に行った際の文書があることがわかった。また、第一回帝国議会開設後に、会議の模様を伝えた小冊子が、行商などの新聞や雑誌とは異なるルートで流通し、そこでも国会が寓話化されていることがわかった。 また、近代小説をお伽噺化した明治末から大正期のお伽噺の調査に着手した。近代小説が子ども向けに寓話化される場合の様態の研究を進めている。
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