国会開設に向けて書かれた啓蒙的文献の中から寓話的表現を調査した。それらを国会開設前の国会に関する寓話としての「国会未来記」、近世文学の形式を借りながら、国会を間接的に寓話化した作品群に分類し、それぞれに検討した。その結果、「国会未来記」には啓蒙書の記述に沿った議論像が描かれているが、演説の描写に比べ、議論における言葉のやりとりは生硬な表現に終わっていた。一方、近世文学の形式を借りた国会物は、議論のやりとりが、口承的な表現として形式化されていたジャンルに則ることで、オーラルな見かけを持った表現に達していた。また、異なる階層間の言語のやりとりなどで、文体同士が衝突するが、合意は「行司」などの役割に任されており、議論の収斂をうまくイメージできなかったことがわかった。
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