本年度は、主に、大戦(間)期イギリス文学・文化の一次資料の分析を分野横断的に行った(文学、政治、社会、精神分析、大衆文化、メディアなど)。特に、戦後イギリス文化において、大戦の「記憶」が形成されていく過程と、そこに大戦の後遺症がどのように関わっているかをある程度明らかに出来た点は、意義深いと考えている。また、文学史的にあまり注目されていない文学テクストへも考察範囲を拡大することで、より包括的でダイナミックな文化状况の復元へと近づけたと考えている。 9月には、ロンドンとノッティンガムで、大戦関係、ロレンス関係の情報を収集できた。この成果は今後の研究におおいに役立つだろう。 まだ、当初の研究計画からテーマが発展し、大戦(間)期イギリスにおける「Englishness」のテーマと「旅」のテーマも研究内容に加わり、一定の研究成果をあげた(雑誌論文として発表)。さらに、過去の研究テーマである「大英帝国」研究を、大戦(間)期英国文化研究に組み入れることで、一定の研究成果をあげることができた(共著書として発表)。これによって、より学際的な研究が可能になった点は非常に意義深いが、その一方で、研究の内容がやや散慢になってしまった印象も否めない。 次年度は、広範な資料分析と同時に、D.H.ロレンスの文学テクストの分析を重点的に実施し、ロレンスを参照点とする大戦間期イギリス文学・文化における大戦後遺症の特徴についての諭をまとめたい。
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