今年度における本研究は二人の作家に関心を払うものである。ピエール・シャピュイとその選集「プレンヌ・マルジュ」及びマドレーヌ・ガニョンとその選集「シャン・プール・アン・ケベック・ロワンタン」である。これは、この二つの選集が、イデオロギーの終焉や現代詩についての問題を投げかけるためである。詩とは空(くう)から、悲嘆から、そして表現の葛藤から、人と世界とを再び結びつけることのできる表現世界である。したがってミニマリズム的エクリチュールは、この葛藤を乗り切る活力を与えることのできる言語活動なのである。ピエール・シャピュイにおいてもマドレーヌ・ガニョンにおいても、ミニマリズム的エクリチュールとは言葉の持つ力をただ小さくしただけのものではなく、むしろイデオロギーの言述に相対する言語活動を退き、神秘と驚嘆に結びつく根源へと言葉を集約することである。"わずかな"言葉とはここでは言語の覚醒であり、言語欲動への回帰なのである。このテーマで論考を二本寄稿し、2007年5月にカナダ・ケベック大学モントリオール校、2008年3月にフランス・ヴァランシエンヌ大学で行われた国際シンポジウムで発表を行った。当該論考は2008年、2009年に刊行予定である。
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