研究概要 |
今年度における本研究は二人の作家に関心を払うものである。ピエール・シャピュイとその選集「プレンヌ・マルジュ」及びマドレーヌ・ガニョンとその選集「シャン・プール・アン・ケベック・ロワンタン」である。これは、この二つの選集が、イデオロギーの終焉や現代詩についての問題を投げかけるためである。詩とは空(くう)から、悲嘆から、そして表現の葛藤から、人と世界とを再び結びつけることのできる表現世界である。したがってミニマリズム的エクリチュールは、この葛藤を乗り切る活力を与えることのできる言語活動なのである。ピエール・シャピュイにおいてもマドレーヌ・ガニョンにおいても、ミニマリズム的エクリチュールとは言葉の持つ力をただ小さくしただけのものではなく、むしろイデオロギーの言述に相対する言語活動を退き、神秘と驚嘆に結びつく根源へと言葉を集約することである。"わずかな"言葉とはここでは言語の覚醒であり、言語欲動への回帰なのである。このテーマで論考を二本寄稿し("Pays, appartenance et poesie : Chant pour un Quebec lointain de M. Gagnon"および"La poesie de Pierre Chappuis : dans les fils blancs de loeil")、また、2008年11月に筑波大学にて国際コロキウムLes liens du peu(2008年11月22-23日、Michele Aquienパリ大学教授、Stephane Hirschiヴァランシエンヌ大学教授、Pierre Ouelletケベック大学教授らを招聘)を開催し、研究成果をもとにした研究交流をはかった。
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