研究課題
今年度は、20世紀ロシア文学の連続的な生成プロセスの様態について、以下の3つのトピックスを中心に研究した。第1の研究テーマは、ウクライナ系ユダヤ人であるイディッシュ語作家ブジ・オレフスキーの児童文学作品『オーシャと友達』のソ連の児童文学界における役割と、ウクライナ系ユダヤ人作家イリヤ・カバコフによるオレフスキーの受容の問題である。カバコフによる『オーシャと友達』の挿画・下絵と、ユダヤ系作家に対するイリヤ・カバコフの言説を研究し、1950年代後半における「オレフスキー体験」がカバコフの後生の作品にもたらした影響を論じ、その成果の一部を『イリヤ・カバコフ絵本図鑑』で発表した。また同書の解説には、1960-80年代のソ連児童文学の特徴(主題、モチーフ、プロット、挿絵との関係、出版状況、ソ連の翻訳文化)についての研究成果も反映されている。第2の研究テーマは、ロシア東欧系ユダヤ人作家の作品における「文学と現代美術の連続性」である。ロシア東欧系ユダヤ人作家の作品におけるテクストと表象の関係をポストモタンの潮流、民族的主題等に着目しつつ分析し、研究成果の一部を論文「ロシア系ユダヤ人非公式芸術家の世界観」(ロシア語)として発表した。第3の研究テーマは、アンドレイ・べールイを中心とするロシア象徴主義における、19世紀文学の継承性、ロシア・アヴァンギャルドとの関連の問題である。研究の最終年度である平成20年度は、象徴主義研究を重点的に行う予定であり、今年度はそのための資料収集、論点の整理を行った。
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Beyond the Empire: Images of Russia in the Eurasian Cultural Context. 21st Century COE Program Slavic Eurasian Studies. 17
ページ: 93-109