1.本年度最大の研究成果は、2007年夏季休暇のソウルへの調査旅行において貴重な資料および人脈を得た結果、論文「崔載瑞のOrder」の発表をみたことである。調査旅行に先立って、Asian Studies Confbrence Japanにおける酒井直樹・Nayong Kwon・黄鎬徳・李英載氏とのパネル("Cultural Politics of Language and Subjectivity from Colonial Korea : Failed Encounters in the Japanese Empire")において、崔載瑞論の理論的枠組みを提示し専門家諸氏から多くの示唆を得たのち、ソウル大学図書館に保管されている旧京城帝国大学図書館所蔵の貴重な資料によってその理論を肉付けする形で、「崔載瑞のOrder」を完成し、韓国にベースを持つ多言語雑誌『〓〓間SAI』に発表した。 2.上記の崔載瑞論が予想以上の発展を見せたことを受け、それに集中するために本年度研究計画の一部次年度繰越を申請し、受理された。その結果、2008年夏季休暇にケンブリッジ大学キングズ・コレッジにおけるアーカイブ調査を実施し、T.S.エリオットの蔵書への書き込みなどを精査することができた。前年度のハーヴァード大学ホートン図書館での一次資料調査の結果と合わせて、成果発表の準備をしている。 3.崔載瑞論の完成を受けて、その成果を同志社大学人文科学研究所・第9研究班(「ヨーロッパと日本における植民地主義と近代性:比較研究のパラダイム構築に向けて」)で発表するとともに、次に向うべき西田幾多郎論の見取り図も同時に示した。
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