2006年3月に日本キプリング協会第10回研究会において、「キプリングと探偵小説」というデーマのもとで発表し、第一次世界大戦期に隆盛する探偵小説というジャンルとキプリフグの後期の短編について考察したが、この成果として、2006年9月刊行の『北星論集』第44巻1号に論文を発表した。前回の科研費のテーマ「ラドヤード・キプリングと十九世紀後半欧米の混淆的文化表象」と合わせた形の研究成果として、2007年2月に、松柏社から『もうひとりのキプリング--代表象のテクスト』を刊行することができたが、先の発表の成果も、一部、本書の最終章に収録される形をとっている。また、キプリングは、第一次世界大戦期に書かれた作品のなかで、戦争で傷ついた兵士の心を癒すものとして、児童文学の女流作家ジェリアナ・ユーイングの作品を引用しており、キプリングとユーイングの関係については、2006年10月に行なわれた日本イギリス児童文学会第36回研究大会シンポジウムにおいてスピーカーを務め、その成果は、日本イギリス児童文学会の査読付き学会誌『Tinker Bell』第52号に投稿、採択という形で結実した。また、キプリングの生誕地であるインドへの調査において、関係資料の収集、調査を行ない、幼年時代のキプリング、および、ジャーナリストとしてキプリングの足跡を知る大きな手がかりを得ることができた。
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