平成18年度は第一次世界大戦終結〜第二次世界大戦下にイギリスで出版された文学作品を国内の大学図書館、またイギリスのBritish Libraryへ赴き収集に努めた。単行本だけではなく、Girls Own Paper and Woman's Magazineなどの女性向け雑誌、そしてこの研究がターゲットとしている時代に出版され、人気を得た写真週刊誌、Picture Post : Hulton's National Weekly(中央大学西洋史学研究室所蔵)にも目を通し、写真と活字から、女性の「労働」と「市民意識」の表象に関する資料を得るように務めた。 Girls Own Paper and Woman's Magazineの若い女性への影響と連載小説に見られる、当時の女性の表象に関しては、論文「「ロビーナの落穂拾い」("Robina Picks up the Pieces")に見る1930年代イギリスの"girls"の表象」(新潟ジェンダー研究6号2007年刊行予定、原稿提出済み)参照。 資料収集また精読の結果、具体的な文学作品、作家を絞り込む必要が感じられため、これ以降は以下の三人に焦点を絞って研究を進める。一人目は、自分自身もジャーナリスト、作家として活躍し、雑誌、The free Womanの刊行に尽力したRebecca West。そして、やはり活字だけでなく、劇、そしてラジオ番組など、メディアを超えて活躍し、この時代に大きな影響力を持っていたJB.Priestley。そしてH.G.Wellsである。Wellsは、SF作家としてすでに文学史上でも高い評価を受けているが、この研究では、作家というよりも、むしろ評論家として大きな役割を果たしたWellsに着目し、Picture Postに連載されたエッセイなども手がかりにして、Wellsが時代を、そしてそこに生きる女性たちをどのように表象したか、考察する。
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