従来、イタリアや大陸ヨーロッパ文学の範疇・影響関係の下で位置付けが試みられては、その特異性のために文学潮流の周辺に置かれていた近現代シチリア文学を、そこに内在する独特な死生観や宗教観、ユーモアから分析したところ、神の超越性に信を置かない内在的な信仰や、再生・輪廻の概念と結びつく大地母神崇拝、愚かさと狡知を巧みに織り交ぜて社会における暗黙の因習を打破する愚者の笑いといった地中海的な心性を指摘することができた。これらの成果によって、シチリア文学に地中海的な視座からアプローチすることの正当性が実証できた。
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