研究概要 |
平成19年度は,昨年に引き続きWilliam Cobbett(ウィリアム・コベット)関連の資料収集を行った。特に,新紙幣制度や金本位制度に関する資料の中でも,日本では入手不可能な当時のパンフレット類や法案の議事録等については,イギリスのBritish Libraryにて必要な資料収集を行った。 さらに,当時のイギリス経済に関するCobbettの反政府的な主張や思想の検証を行った。当初の予定では,資料収集の範囲を上記の研究目的の項目で挙げた当時の政治家,ジャーナリスト,政治活動家などまで広げ,同時代の様々な言説の整理を行うことにしていたが,思うように時間がとれず,これについては,次年度に持ち越しとなった。 上記の資料収集及び整理と並行して,昨年度から,P. B. Shelley(パーシー・ビッシュ・シェリー)などに代表される,関連する19世紀初頭のイギリス・ロマン派の作品の精読を継続しており,平成19年度末にその研究成果を論文としてまとめ,査読付の専門誌に投稿することが出来た。しかしながら,その掲載は認められたものの,発行日の関係から平成19年度内の発表にまでは至らなかった。 上記の論文の題目は,「想像力とロマン主義:シェリーの詩論に関する一考察」であり,本研究課題のテーマとなっている「ロマン主義と想像力」という観点から,Cobbettと同じく18世紀末から19世紀初頭に活野躍した詩人であるShelleyの著作のなかでも,特に彼の散文A Defence of Poetry及びAPhilosophical View of Reformに注目し,当時のイギリス社会において受容されつつあった功利主義との比較において,彼が考える想像力の社会的意義及びその思想の変遷ついて考察した。
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