本研究は、東アジアにおける<アメリカ>の記憶という観点から現代日本のアニメーション文化について考察するものである。本年度は、昨今急速に展開されている冷戦体制期の米国のメディア戦略に関する資料、およびデジタル化された研究資料、データを収集し分析することにつとめた。今年度の研究成果として、米国、東京、トルコ、インドにおける国際会議で発表を行い、各国の研究者と有益な情報交換、インタビューを行った。これらの成果は、別紙に記載したとおり、論文として、学術雑誌『寄せ場』2007年5月、および雑誌『ユリイカ』2006年8月増刊号、『新現実』2007年4月号、また学内紀要『比較文化論集』2007年春刊行予定にまとめた。国内のみならず、国際的な場でテーマを共有する研究者と議論を重ねていくことができ、いずれも本研究を遂行するうえできわめて貴重な機会であった。 また、今年度の論文、および発表を通してさらに深化、発展させていく点があると感じたのは、第一に、冷戦体制期における米国側の東アジアにおけるメディアネットワークに関する当時の文書の綿密な解読だけでなく、現実に日本がそれをどう展開させ、変容させていったのかということ、第二に、東アジアにおいてどのようにそれぞれの国で<アメリカ>の記憶と現実、日本の記憶と現実が交錯しながら展開していったのかということである。これらについては、資料の解読だけでなく、実際にメディア機関へのインタビュー、当時の雑誌、社報などを踏まえた上で、他国の研究者とも議論しながら、事実を明らかにし、考察を深めていきたい。 以上の点をふまえて、来年度、今年の成果をふまえてさらなる研究を遂行している最中である。その成果は19年度の4月にソウルで行われる「東アジアにおける冷戦文化のダイナミクス:1960〜70年代の冷戦期における地域の文化変容と国民国家の文化政治」と題する国際シンポジウム、トロント大学で行われる文化研究に関する国際シンポジウム(5月)、および上海で行われるインター・アジア・カルチュラル・スタディーズ会議(6月)をはじめ、多数の場で研究発表を行うことがすでに決定している。
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