本研究の目的は、冷戦期において、ディズニーをはじめとするメディアのネットワークを米国の外交政策と政府文書を紐解きながら、米国がどのような政策に基づいてメディア文化を海外に流通させていったのか、そして日本のメディアがどのようにそれを受容していったのかを、同時代の東アジア諸国との政治経済的、文化的関係から実証的かつ理論的に検証することであった. 過去二年間、米国と日本の関係を軸に調査を進めてきたので、今年度は東アジアを視野におきながら、これまでの調査を再検討することに努めた。東アジアのアニメーション産業においては、現在、中国がこれまでになく政策的に躍進を遂げている。そのため3月に上海でインタビュー調査を行い、昨今の中国におけるメディア状況について貴重な意見交換、情報交換を行った。また米国は、冷戦期に英国の作家ジョージ・オーウェルの「動物農場」をはじめ、いくつかの物語を反共産主義のプロパガンダとしてアニメーション化し、日本をはじめとした西側諸国に普及させている。これに関して夏に英国で調査を行った。 本年度は、最終年度であったため、これまでに調査・収集した資料を読み解きながら、過去二年間に海外および国内で報告した研究発表及び論文を再検討し、単行本にまとめるべき総括することに努めた。同時にまた昨年度韓国で行われた「東アジアにおける冷戦文化のダイナミクス : 1960-70年代の冷戦期における地域の文化変容と国民国家の文化政治」において発表した原稿については、共著本の出版が予定されており、執筆の準備を進めている。
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