平成19年度は、前年度の研究活動を踏まえ、イランの口承文芸に関するデータベースの作成、およびこれを用いた民俗学的分析について、平成19年度科学研究費補助金交付申請書における実施計画に沿って、下記に示した方法を中心に研究を行った。なお、データ入力や単純な作業については、ペルシア語の知識を有する研究補助者を活用した。 1.統語情報の付加:昨年度に引き続き、ペルシア語の単語単位でセグメント化された状態のXML形式の口承文芸資料について、GDA方式を応用する形で、依存関係、代名詞の照応先等の統語情報の付加を行った。本年度の作業で、202例の口承文芸資料に関し、精査の作業を残すものの、一通りの統語情報の付加が終わった。 2.意味属性情報の拡充:これまでに入力した意味属性情報を補足・拡充した。前項1の作業と並行して、必要な意味属性情報の拡充を行った。平成19年度に新規に追加した意味属性は約70例である。 3.民俗学的分析:1および2の項目における作業が一通り終わったことにより、統語情報を含めた検索システムの開発を行った。この「イラン口承文芸統語情報検索システム」は、まだ、未完成の状態ではあるが、従来までの技術である名詞の意味属性からの検索ができるほか、話者情報から話者の年齢、性別、出身地を絞りこむ機能を持ち、さらに、特定の意味属性と統語情報の複合検索が可能となった。この検索システムを使用して、イラン民話の抽象的様式に着目した研究を行った。
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