本年度は、平成18〜19年度に引き続き、ナシ語口語資料のデータベース化の一環として、中国雲南省のナシ族居住地において、ナシ語の方言の発音に関する調査を行った。平成20年8月4日から9月18日までの現地調査においては、雲南省昆明市・麗江市などにおいて、平成18〜19年度に調査した複数のナシ語方言についての補充調査を行ったほか、新たに宝山郷、大東郷などのナシ語方言を調査した。また、この現地調査の期間、これまでに現地で作られたナシ語のローマ字による出版物のうち、特に入手が難しい新聞などの資料を現地の研究者を訪問して収集した。これらの出版物については、これまでにすでに入手したものと合わせ、その特徴・背景などを考察して報告した(「ナシ語による出版物について」)。さらに、これらの出版物の一部について電子テクスト化を進め、そこで見出される熟語について、上記調査期間中にナシ族に意味などの確認を行い、その結果を発表した(「ナシ(納西)語熟語の基礎的研究-形容詞・その他の熟語編、および補編」)。また、ナシ族の宗教経典のテクストについては、これまでに行ってきた口語ナシ語の理解を基にして検討を進め、その擬似的な解読方法の一環として、複数の経典における文字の出現頻度を算出してテクストの「骨組み」を抽出する方法を考案し、その具体例とともに発表した(「ナシ族トンバ経典文字テクストの基礎的研究-出現頻度に基づいた「骨組み」の抽出」)。
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