本年度は、まず足立美術館庭園を中心とした島根県でフィールド調査を行い、現代のアメリカにおける日本庭園イメージを理解するために、具体的な造園技法と鑑賞方法など特に京都の庭園との比較から分析を行った。さらに文献調査として、千葉大学園芸学部所蔵する創立当時の講義要覧、教務関連資料、文部省・農商務省からの通達などの創立に関する資料と、同窓会事務局が所有する同窓会会報などの資料の閲覧と複写を行った。また国立国会図書館では、農学、園芸学の設置に関する公文書を中心に資料収集を行った。これらの資料から、日本近代における造園学の創設経緯が具体的に明らかになった。 また国外の文献調査として、イギリスの王立園芸協会のリンドリー・ライブラリーと大英図書館を中心に、19世紀半ばにイギリスで刊行された庭園に関連する雑誌を中心に資料の閲覧と収集を行った。これらの雑誌から、日本庭園あるいは日本に関する記事をすべて抜粋し、19世紀半ばからイギリスにおける日本庭園に関する関心の動向についての資料を収集した。さらに、アメリカのニューヨーク公立図書館とワシントンDCのダンバートン・オークスで、20世紀初頭にアメリカで刊行された庭園に関連する雑誌の所蔵状況と資料収集を行った。この調査では、アメリカン・ガーデン・クラブの1935年の来日に関する一次資料を発見することができ、アメリカにおける日本庭園への関心を具体的に明らかにすること手がかりを得ることができた。 国内調査では、農学や林学の一部として整備されていった日本の庭園研究の特徴を歴史的に解明するための資料を収集することができ、また国外調査では、ヨーロッパとアメリカにおける日本庭園への関心の動向を具体的に明らかにする資料を収集することができた。
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