平成19年度の調査をもとに、本年度は、イギリスの王立園芸協会図書館(リンドリー・ライブラリー)が所蔵する雑誌に焦点を絞り、資料の収集をおこなった。具体的には、『the Gardener's Chronicle』(1841年〜現在『Horticultural Week』)と『The Garden』(1866年〜現在『The Journal of Horticultural Society』)という19世紀半ばからイギリスで出版された園芸雑誌を対象に、日本庭園に関連する記事を収集した。1940年まで刊行された分に特定したが、その間の記事だけでなく、挿し絵や写真などの画像資料も両雑誌から網羅的に収集することができた。『the Gardener's Chronicle』は、1841年に刊行された当時、6500部が刷られており、広い読者層を獲得していた園芸雑誌と位置づけられている。そのため、本雑誌上でどのように「日本庭園」が扱われていたか、どのような情報が提供されていたかの分析と把握は、19世紀半ばから後半にかけてのイギリスにおいて、「日本庭園」にどのような関心が寄せられていたのかを知ることにつながっている。19世紀末にイギリス人建築家のジョサイア・コンドルが「日本庭園」に関する著作を出版するが、本年度の調査では、コンドルが本著を発表するまでのプロセス、あるいは歴史的背景を知ることの手がかりがつかめたといえる。
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