本年度は、平成18年度から継続している調査の最終的な補完作業と、これまで収集したデータを体系的に整理統合した。イギリスとアメリカで収集した19世紀末の雑誌のなかの日本庭園に関する記事と画像の照合作業、著作権の確認、日本にある資料との整合性など、学会発表や論文執筆をするために必要な作業を中心的におこなった。 具体的には、『The Gardener's Chronicle』(1842創刊、調査対象は1941年まで)、『The Garden』(1872創刊、調査対象は1927年まで)、『The Gardener's Magazine』(1874創刊、調査対象は1916年まで)の雑誌に掲載された記事と画像の資料収集と整理統合、照合作業を完成させた。 これらの調査結果は、19世紀末のイギリスで、日本庭園に関する知識がどのように伝達されたのか、イギリスにおける日本庭園への関心の変遷、日本庭園イメージの形成過程を明らかにするための基礎的な資料になりうるといえる。 網羅的な資料の採取的な整理と同時に、調査の最終年である本年度は、これまでの調査の成果を学会発表という形でも公表した。2009年3月26日からアメリカのシカゴで開催されたAssociation for Asian Studies(アジア研究学会)では、本調査の中間報告として『Popularizing Zen Gardens』と題して、3月27日に発表を行った。また翌28日には、カリフォルニア州立大学主催の『Japanese Gardens Outside Japan』と題したシンポジウムに招聘され、「Japanese Gardens West and East」と題した講演をおこなった。これらの発表では、イギリスで収集した資料をもとに、19世紀末のイギリス、20世紀初頭のアメリカで、日本庭園に関する情報がいかに伝達され、禅などと結びつけられていった経緯などについての分析結果を報告した。
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