研究概要 |
平成20年度の研究実績は、(1) 疑問代詞目的語語順変化、(2) 中古漢語における単音節と二音節の"共存"現象、に関する研究に分類される。(1) は、本科研において取り組んできた中心的研究課題である。本年度は、これまでの成果を総括し、その内容を「古漢語疑問代詞賓語詞序變化機制研究」として発表した(浙江大學漢語史研究中心學術研討会, 2008年8月23日)。その主な内容は、(A) 疑問代詞目的語「誰」は統語的曖昧性を軽減させるという文法的要求により前置から後置に転じ、そして(B) 二音節語化により急増した「何+N」目的語フレーズは、その前置形式が反語専用形式化したことにより疑問表示のために後置形式が出現し、さらに(C) 「何N」型疑問代詞目的語は急増した「何+N」目的語フレーズへの類推により後置へと転じた、といった語順変化の具体的メカニズムである。さらに、以上のような変化が後漢魏晋南北朝期に発生したのは、これらの変化がすべて"単音節疑問代詞体系の簡略化および二音節語化"というこの時期に顕著になった変化と密接に関連しているからだと主張した。(2) は、上古から中古に至って機能語・内容語のいずれも二音節化が進展するが、その際、単音節語と二音節語とが共存する現象がみられること、そして両者には往々にして機能上の微細な差異が存在することを指摘したものである(「淺談中古漢語同義的單雙音節詞"共存"現象」漢語歴史詞彙與語義演變學術研討会, 2008年8月25日)。以上の(1)(2)の他、内容としては19年度に口頭発表したものであるが、漢訳仏典にみえる特殊な文法現象について、それが漢語の口語とどのような関係にあるかを検討した論文を、海外査読誌(『漢語史學報』第八輯)に投稿し、採用が決定された(「也談早期漢譯佛典語言在上中古間語法史上的價値」ただし刊行は平成21年になる予定である)。
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