フィールドワークで得られたデータに基づき、ウズベキスタン内ブハラで話されるタジク語の変種を記述した。この成果の一部は、研究実施計画で計画されたように、すでに出版された著書(Bukharan Tajik)の形で発表済みである。フィールドワークにおいては、ウズベキスタンにて現地の研究者との連携により、データの分析を確実なものとしたが、この過程で、10代から50代までの年齢も性別も多様な母語話者と多くのセッションを行うことができ、結果として、この変種内の世代間での変異も記述することができた。 これは前述の著書の内容に一部反映させることができた。 フィールドワークでは、この他に、特にタジク語とウズベク語の接触による文法化のプロセスを調査した。このような文法化の事例の中には、タジク語の前置詞の後置詞化のように、ウズベク語との接触によるものと推定が可能なものの他にも、タジク語前置詞の名詞化のように、ウズベク語との接触と関連が無さそうなものまでが認められ、現在のブハラのタジク語における文法化をウズベク語との接触に排他的に帰すことができないことが分かった。また、ブハラのタジク語の母音音素体系が初期中世ペルシャ語の母音音素体系から(恐らくは引き寄せ)連鎖推移によって成立した可能性があることが分かった。この調査の成果は21年度に論文として発表する予定である。
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