本研究は類型論的に近い二つの言語(日本語・韓国語)の統語構造を比較することにより、母国語話者の言語知識の理論の中核をなす、自然言語の規則性をつかさどる原理を規制するパラメータを、類型論的に比較的近い言語の文構造の比較・考察を通して解明することを目標とする。 研究目標:(i)格交替現象と(ii)線条化について、対象言語(日本語・韓国語)の類似点と相違点が明確な現象を絞り込み、その現象に関するデータ収集および分析を行う。 研究課題:対象言語の統語現象を比較し、二つの言語のパラメータの値の設定の違いが上記(i)(ii)において顕著な現象を概観・検討し、関連データを収集・分析する。 平成18年度には、上記目標と課題に従い、動詞句および項構造に関する現象を検討した。その結果、(1)二重目的語構文(2)受益者構文(3)結果構文の三現象に焦点を当てることに決定した。この三現象に関して、韓国語の母国語話者から言語データを収集した。また、この三現象に関して造詣の深い言語学者二名(張超(上海海事大学)およびRichard Larson (Stony Brook University))と討議の機会を設け、データの分析、および理論的意義の考察を行った。その結果日本語と韓国語の二重他動詞構文の違いは、与格(日本語の音形は「ニ」)のどの自然言語にも共通の普遍的な特性と、日本語固有の「二重ヲ格制約(Double-o Constraint)の相互作用によるということが明らかになった。以上により、平成18年度の目標と課題はほぼすべて実施された。
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