本研究では、地域社会の構造的特性(階層差や都市化の程度、それに伴う生活様式)や志向性(規範意識、人の気質)を「社会フィルター」と呼び、ある種の言語変化が、この「社会フィルター」を介して生じると考える。こうした想定のもと、「社会フィルター」を介した言語変化の事例を分析することにより、方言差が生じるプロセスを明らかにしていく。 平成18年度は、中央社会と地方社会の比較という観点から、本土とは異なる文化的・歴史的背景を持つ沖縄社会の言語使用の動態を調査・分析するために、下記の日程でフィールドワークを実施した。 6月16〜19日沖縄県那覇市におけるフィールドワーク(準備調査) 9月18〜23日沖縄県那覇市におえるフィールドワーク(本調査) 9月に実施した本調査では、以下の調査を実施した。 ・那覇市首里出身の老年層話者2名に対する、方言使用(主として授受表現、指小辞「グヮー」)に関する聞き取り調査と場面設定の会話の音声収録調査。 ・琉球大学学生2名(那覇市首里出身・宜野湾市嘉数出身)に対する、方言使用に関する聞き取り調査と場面設定の会話の音声収録調査。 ・那覇市立城西小学校の方言クラブ活動の見学。および地域ボランティアとして方言指導を行う方々へのインタビュー。 ・那覇市立城南小学校の地域ボランティアの方々へのインタビュー。 ・那覇市立泊小学校の卒業生に対するインタビュー。 以上の調査をふまえて、秋田大学の学生による以下のレポートの指導を行った。 加藤麻美「女性の名前の変遷から見る本土と沖縄の意識差」 斎藤泉実「那覇方言の指小辞「グヮー」の意味・用法」 猿田美穂子「標準語励行の実態と人々の意識-方言札に着目して-」 以上のレポートは、島村恭則・日高水穂編『2006年度日本・アジア文化調査実習沖縄フィールド・リサーチ1』(秋田大学教育文化学部)に掲載した。
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