研究概要 |
本研究の目的は、幕末から明治二十年頃までに編纂された日本語・西洋語対訳の会話集について、日本語史資料として多くの研究者が利用できるよう整備することにある。平成19年度の主な研究実績は以下の通り。 1.アーネスト・サトウ"Kuaiwa Hen"(明治六,1873年刊)について、漢字仮名混じり文によるPartIの翻字、及びPartIIの英文翻訳作業を行ない、全25課のうち、序文と巻末の動詞活用表を含めた第16課までについて同作業を終了した。その際、単なる翻訳に終始せず、その中で記されている風俗・習慣・事物などについても辞書類を参照するなどして検証を行なった。 2.同資料に関する先行研究を集め、各資料における研究の現状を把握した。 3.同資料の中に出てくる参照資料(アストンの口語文典"A Short Grammar of the Japanese Spoken Language"第2版1871年刊や・同文語文典"A Grammar of the Japanese Written Language"初版1872年刊、ホフマンの日本文典"A Japanese Grammar"など)についても資料を収集し、必要に応じてそれらの資料を参照しつつ、サトウの記述の典拠や妥当性について検証した。その結果、サトウの"Kuaiwa Hen"は特にアストンの口語文典および文語文典の文法体系の影響を強く受けていると同時に、独自の判断による文法範疇も見られることが確認された。
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