研究概要 |
本研究の目的は、幕末から明治二十年頃までに編纂された日本語・西洋語対訳の会話集について、日本語史資料として多くの研究者が利用できるよう整備することにある。平成20年度の主な研究実績は以下の通り。 1.アーネスト・サトウ"Kuaiwa Hen"(明治六, 1873年刊)について、漢字仮名混じり文によるPart Iの翻字、及びPart IIの英文翻訳作業を行ない、前年度までに未完成であった全25課について同作業を一通り終了した。加えて、冒頭からもう一度翻字と翻訳について見直し、訳語や書式の統一を図った。 2.サトウの日記等、"Kuaiwa Hen"の編纂に関係する様々な資料を参照し、Kuaiwa Hen"の記述との関連性について探った。 3.Part IIの英文翻訳の際に気づいた、サトウの日本語文法観や用語の特徴についてまとめた。例えばbase(語基)、root(語根)、participle(分詞)といった用語・概念は、アストンなどの先行学説に拠りながらもサトウ独自の考え方があり、しかも"Kuaiwa Hen"では必ずしも一カ所で詳述されているわけではない。従って、把握するにはやや困難が伴うが、全編を翻訳することによりその全体像が明らかになってきた。 なお、Part IIの翻訳については、『茨城大学人文学部紀要人文コミュニケーション学科論集』第7号(2009年9月)以降に、「訳注稿」として連載する予定である。
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