研究概要 |
ミニマリスト・プログラムの枠組みにおいて疑問詞の移動現象の理論分析にあたり、本年度は次のことを行った。 まず、英語のWH疑問文における統語特性と意味特性との関連性、ブルガリア語・ルーマニア語の多重繰り上げ疑問文の統語的特性、多重疑問文の関数的解釈などを考慮に入れながら、疑問詞移動における一見最小労力効果のように見える現象が、最大効果の原理等の帰結として説明されることや、最大効果原理が言語計算の最適性の内容を構成する原理の一つとして有望であることを明らかにした。 また、本研究の提案する理論システムにおいては、例外的格標示構文に疑問詞(WH句)が関与する場合、その疑問詞もCP節のedgeに移動するという経験的予測をする。そこで本年度は、前年度の議論を深める形で、イディオムや副詞、適正束縛条件やその他のさまざまな理論的道具立てを用いて予測の検証を行った。さらに、本研究のシステムの理論的帰結として、日本語に対するWH移動分析やChomsky(2001)のフェイズ理論などに対して経験的なサポートが与えられることを示した。 さらに、本研究の理論システムの反例や問題点のチェックをし、それらに対する解決策を提示した。20年度時点で解決できない問題点も見つかったので、それらについては、今後の課題として抽出した。 なお、本年度の終わりには、これらの研究成果をまとめ、論文"ECM, Wh-questions and Phase Theory"として発表した。
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