本年度は、(1)英語の語強勢の付与を決定づける韻律的な構成素である韻脚(Foot)に関連する論文の執筆と、(2)英語の語強勢に関する発話実験と知覚実験を行った。 (1) 韻脚(Foot)に関連する論文『Durational correlates of English sub-lexical constituent structure』では、音韻理論で提案されているFootが本当に実在するのかを、その音響的特徴を探ることで、明らかにしようと試みた。この論文は、国際ジャーナルphonologyに受理され、009年度に刊行される号に掲載される予定である。 (2) 英語の語強勢の音響特性を調べるための発話実験は、2008年10月に、AKPの留学生3名を対象に、知覚実験は、2009年1月から3月にかけて、日本語母語英語学習者(普通レベル30人程度と上級レベル10人程度)の学生、日英バイリンガルの学生(15人程度)、そして英語母語話者の学生(AKP留学生が10人程度)を対象に行い、現在もさらに多くの被験者を対象に知覚実験を遂行中である。この知覚実験は、名詞と動詞が、語強勢の位置を変えるだけで区別される2音節語を用い、ピッチ情報が欠如した環境でも、語の語強勢の位地が正しく判断されるかを確かめ、さらに語強勢が完全に欠如した弱化母音の情報を、日本語母語話者も英語話者と同じように、語強勢パターンを認識するために、用いることができるかを確かめることが目的である。この実験はまだ終了はしていないが、今まで得られた日本語母語英語学習者と日英バイリンガルの学生から得られたデータを分析した限りでは、英語レベルが上がるにつれて、ピッチの型や元の語のストレスパターンに関わらず、語頭に語強勢があると判断される割合が上がることが確認された。また、弱化母音がストレスパターン認識に及ぼす影響は、異なる英語レベル間で、あまり差がない、という暫定的な結果も得られている。今後もさらなるデータを分析していく予定である。また、上記の発話実験および前年度の発話実験のデータを用いて、現在、論文を執筆中である。
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