研究課題
本研究は、日本語能力に問題を抱えている聴覚障害者が、自分自身の日本語能力を客観的に把握し、学習に活かすことができるような日本語能力テスト開発のための基礎となる研究である。平成18年度は特に、聴覚障害者の日本語能力の実態及び誤用の背景を客観的に把握することを主眼において研究を進めた。まず、日本語能力試験を聴覚障害学生に実施し、文法的な誤用の中で特に緊急性の高いものについてピックアップを行った。その結果を基に、まず格助詞の理解と産出の両面を更に深く問うような問題群を作成、実施した。結果を分析したところ、「に」格の誤用が目立つことから更に「に」と関わる受身、使役文等のテストを作成中である。また、アスペクトや否定、敬意表現、複文に関する問題も作成中である。これらの問題は19年4月に実施し、結果を分析する予定である。19年度以降は、聴覚障害者が企業等で働く際、実際にどのような日本語力が必要とされているか、どのようなコミュニケーション上の困難があるのか等も具体的に把握し、テスト作成に役立てることを目指している。そのため、聴覚障害者を雇用している企業でインタビュー調査を行う予定である。また、聴覚障害者の複文理解と音声的情報との関連について、7月の国際認知科学会(カナダ)でポスター発表を研究協力者と共に行った。発表した内容は、論文としてまとめ投稿した。現在査読中である。その後、現在まで更なる文理解の実験を行うために実験例文を作成中である。この実験は今年度早々行う予定である。その他、聴覚障害学生の作文やメールの分析、日本語の読解、作文の指導などを継続的に行っている。
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Preceedings (The 28th Annual Conference of the Cognitive Science, Vancouver, Candla)
ページ: 1629-1634