研究概要 |
文章における論理構造の違いが既有の情報や信念にどのように影響するか,そして,異なる言語間においてどのような論理構造が好まれ,効果的コミュニケーションに繋がっているのか,どのような日本語の論理構造が理解や学習が容易であるかについて明らかにしてきた。人々が持つ先行信念や論争的な問題に対する態度が,新たな情報に対する反応にどのように影響するかを,理解,再生,証拠の評価,事後の信念の変化を用いて甲田(2006)で実証した。論争的問題に対する様々な証拠の解釈は,認知的処理に対する個人の信念や特性によってどのように影響を受けるのか,さらに,論証方法,伝えるための効果的な文章構造,論理構造を信念の変更のデータをもとに提示した。認識論的信念や認知欲求度の個人差が情報の獲得とどう関連するか,というテーマは,単に言語理解者を静的で不変のものとして扱うのではなく,知識の獲得過程が個人によって異なり,学習やコミュニケーション活動をよりダイナミックな過程として捉えた点で,評価できるものである。読解過程や知識の獲得過程をこのように,認識論的信念や認知欲求度,さらには論理的思考の個人差が相互に影響し合った動的プロセスとして捉え、英語、韓国語、中国語、アラビア語等の多言語の比較研究を進めた。日本語、中国語、アラビア語の調査は2006年度中にデータを収集することが出来た。日本語については、甲田(2006)で発表し、アラビア語については2007年度開催予定の国際シンポジウムでの発表が採択された。
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