平成20年度は昨年度に引き続き、沖縄県内の日本語指導を必要とする児童生徒を中心に、関係者らに対して、沖縄県の年少者日本語教育の実態を明らかにすべく聞き取り調査を行った。さらに、その結果を踏まえて、教員養成学部の教師教育における年少者日本語教育学のカリキュラム提案を試みる目的で、教育学部日本語教育コースの「日本語教育実習」クラスで、県内の小学校に在籍する日本語指導が必要な児童を対象とした日本語教室を実施し、年少者日本語教育の実践研究を行なった。 その結果、(1)実習前に必要であり、なおかつ可能な年少者日本語教育に関する知識や技能、(2)小学校と大学・教育委員会・日本語指導員との連携の試みによる課題、(3)JSLカリキュラム実践の試みによる課題、(4)県内の教員養成学部としての役割が主な研究成果としてあげられる(詳細は、実習報告書を参照されたい)。 本研究を通じて、県内では日本語指導が必要な児童生徒が分散している地域が大半であること、また児童生徒の日本語力、背景、母語などは多様であり、さらには児童生徒が少数で流動的であることから、県内の児童生徒を受け入れている学校現場で、継続した支援体制を整えることは難しい現状が明らかになった。よって、未来の教員を育てる大学という場と教育委員会が中心となって、継続した実態把握や支援体制を整え、地域と学校と連携したネットワークを築くことが重要であり、そのためにもまずは、教育学部は各教科専門との連携や知識・必要性の共有を学部内でとること、さらに児童生徒を担当する現場教員には、学部の知識や人員(学生ボランティアや専門教員)を活用することの有効性を訴えることが重要であることが分かった。
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