研究概要 |
前年度に行われた文献研究より,今後の第二言語語彙研究の中で,心理学またはバイリンガル研究等の関連分野において現在までに提案されている理論およびモデルを援用する必要性が指摘され,特に,心理言語学的語彙習得モデルが今後の第二言語語彙研究の基盤とするモデルとして有益であることが確認をされたことを受け,平成19年度は,この心理言語学的語彙習得モデルの主張する心的辞書の仮説的発達過程についての検証を行うことを目的とした。 そこで,日本人英語学習者を対象とした調査を実施し,上記の心的辞書の仮説的発達過程の妥当性の検証を行った。その結果,学習者の持つL1語(日本語)が心的辞書の発達過程において重要な役割を持つことが明らかとなり,日本人英語学習者における心的辞書の発達過程の一過程が明らかとなった。特に,L2語に付加されたL1翻訳語の意味という要因が,心的辞書の発達過程の初期段階とともに,最終段階へと移行する際に必要となるL2語の意味範疇の再構築に重要な影響を与えることが明らかとなった。また,中でも,L1語の持つ語彙特性のうちL1語に対する親密度が,意味範疇の再構築において,コアとされる意味素性を規定する可能性が示唆された。 上記の調査研究結果より,次年度(最終年度)に計画されている日本人英語学習者を対象とした語彙の教授効果の検証に向けた実験計画の設定および実験計画の確定を行うとともに,今後の英語教育の語彙教授および語彙学習の両視点からの教育的示唆を導き出すための基礎的データとした。
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