研究概要 |
本年度は, 前年度までの実験・調査により明らかとなった日本人英語学習者の心的辞書の発達過程の一過程において学習者のL1語(日本語)の意味情報が重要な役割を果たすということから, 今後の日本の英語教育における語彙の教授および語彙学習の両視点から教育的示唆を導き出すことを目的とした。特に, 第1言語習得と第2言語習得における語彙の習得過程の違いに着目を行うとともに, 現在の第2言語習得理論において主張されているForm-Meaning Connectionという現象に着目し,この考えを第2言語の語彙習得に応用をすることとした。また, L1語とL2語の関係に着目をした異言語間影響研究の成果を基に,日本というEFL環境における意味転移という現象に着目する重要性の指摘を行った。これらのことより, 学習の初期段階におけるL1語の意味情報の重要性だけでなく, その後の第2言語の語彙使用においても,現在まで着目をされてきていなかったL1語の意味情報が大きな役割を占めることが示された。そのため, 教育的示唆として, 教授者が語彙教授場面において, どのような第1言語の意味情報を学習者に提供をすることで, 学習者の語彙習得が促進または抑制されるのかに関する情報提供を行うことが可能となった。また, 時間的制約のあるEFL環境としての日本の英語教育において, 語彙をどのように扱うべきであるのかという教授に対する示唆ともなり得るとは考えられる。
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