本年度の研究成果は、以下の3点に集約できる。 1.実験環境の整備と実験手法の修練 研究助成を受けて初めに整備したのが、本研究に必要な実験施設である。特に被験者の質的データを取得することを目的とし、ライブカメラによる被験者行為録画装置を中心に、実験被験者の表情やeラーニング中の被験者のマウスの動きなどを動画として保存できるシステムを構築した。この装置を使うことで、eラーニング教材側にある「回答反応」のスピードを測る機能と併せて、被験者の実験中の諸反応を記録し、質的データとして分析することができるようになった。 2.実験手法の修練 多くの第二言語用eラーニング教材は、言語理解や言語習得そのものを基準にその効果を測定しているが、本研究では、被験者の知識構築がどのように行われるかという学習科学の観点を採用しているので、独自の測定点が必要である。その中でも、知識の熟達化の過程で現われる自動化のプロセスを「回答反応速度」で類推できることが判り、この尺度を採用することにした。また、think aloud手法という実験中に頭に浮かんだことを言葉にしてもらい学習者の心理を探る手法も効果的であることが判った。 3.研究成果発表 昨年度中の研究成果の発表は、二回の口頭発表で行われた。1回目は、日本教育工学会22回全国大会で「Design of Web-based cognitive learning strategy (Single Cognitive Sub-skill Drills : SCSD) for English remedial instruction)という題目で、二回目は、2006年国際基督教大学大学院&ソウル大学大学院共同大学院フォーラムで「CLT & Language Pedagogy」という題目で行われた。何れもCognitive Load Theoryを中心とした学習科学を第二言語教育の知識構築に活かすかという命題を中心に発表し、第二言語知識を合理的に構築し、熟達化させるためのアプローチや具体的手法について語った。
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