研究概要 |
本研究は,これまでにない新しい特徴を持った学習者コーパスを構築することを主目的としている.日本人学習者の英語による発話を大量に収集し,コンピューター・データベース化(学習者コーパス化)する研究はこれまでにもなされてきたが,本研究が試みているのは,(1)目標言語(英語)による発話データ,(2)誤りを含むその不完全な学習者発話を母語話者が訂正したデータ,(3)学習者が意図していたことを母語である日本語によって表したデータの3バージョンが並列されている,「パラレル学習者コーパス」の編纂である. 2年目となる平成19年度は,昨年に引き続きデータ収集を行うとともに,発話の書き起しを進めた.本年度のデータ提供者は26名で,昨年度とあわせ蓄積は40名分となった.研究開始当初は最終的に100名分ほどを目指していたが,その達成は困難であると思われるに至った.原因としては,(1)2時間という長時間にわたる拘束を要求するための時間的制約,ならびに(2)英語への苦手意識が挙げられる.しかし,実際にデータ収集後に実施するアンケート調査では,「このインタビューは楽しかったか?」との問に対し平均4.1(非常に楽しかったが5)の回答を得ている.最終年度は研究協力者への依頼文言を工夫したり,参加済みのデータ提供者からの依頼を交えたりしながら,さらに人数を増やしていきたいところである. また,これまでの書き起し作業については,予想していたほどの困難点は感じられておらず順調に進捗しているといえる.従来の発話データのコーパス化には,録音メディアとしてテープあるいはMDが用いられていたが,本研究では映像を合わせて記録しているという点で聞き取りの難しさが軽減されている.最終年度は,オリジナルの発話とパラレルとなる日本語版および訂正英語版の作成・修正を中心に行っていく.また,統語的・語彙的分析を加えていく予定である.
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