北大植物園・博物館所蔵鳥類標本ラベル情報の撮影と、データベース登録を終え、旧台帳と現存標本との照合作業を完了した。この結果、各年代の台帳と多様な標本ラベルとの対応関係を明らかとし、論文執筆に着手している。また、台帳と対応しない標本ラベルについても、特定コレクションの管理用ラベルであることを解明し、調査報告書などとの照合作業が可能であることを見出した。以上の成果から、博物館管理台帳の採集年台記載の不備、誤りの修正作業に着手し、報告を準備している。この結果により、博物館所蔵全鳥類標本の目録化が可能となり、画像が付属するデータベースの作成に着手する体制が整った。標本交換の実態解明については、学習院中・高等科所蔵標本の悉皆調査を行い、理科大学との交換で札幌農学校所属博物館から送られた標本を確認し、旧台帳との照合を行った。また、ストックホルム自然史博物館への交換標本についても全容を把握した。博物館開設当初に内務省博物館との交換で得た産業資料についてもほぼ全容を把握し、日本の博物館黎明期における標本管理方法について新たな知見を見出した。今後は東京国立博物館などの歴史・産業資料との比較検討から、内国勧業博覧会出品資料の特徴を明らかとする予定である。 過去の台帳、標本カードに加え、明治から昭和期の鳥類分類関連書籍、論文を博捜し、博物館における標本管理の基礎が、明治末は飯島魁「日本の鳥目録」、昭和期は日本鳥学会「日本鳥類目録」であることも確認され、標本管理者の活動の一端を見出すことができた。 博物館の標本管理史という視点から博物館の歴史を描き直すことは、各博物館が所蔵する標本・資料の情報を追加するだけではなく、博物館そのものの歴史や学問分野の動向がどのように博物館に反映されてきたかという実態解明にもつながり、新たな博物館史の視点を切り開いたものと考えている。
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