本年度は、研究課題の最終年度にあたり、3年間の研究成果をまとめると同時に、必要な補充的な調査を行った。これらの研究成果は、2009年秋に刊行予定の研究代表者の単著に反映される予定となっている。 前年度の調査で、異文化交流の媒介項であるところの通訳集団である長崎のオランダ通詞の社会的基盤について、当該期の長崎の都市社会での役割から考えた。本年度は、その媒介項と、長崎において九州地域との結節点となる九州諸藩の蔵屋敷との関係が重要であると考え、本年度の研究課題とした。特に藩の蔵屋敷については、その統括者であり長崎奉行との連絡役である聞役が1640年代に幕命によって各藩が派遣するようになったという従来の理解について再検討を行った。その結果、長崎奉行と各藩との個別人格的な関係は十七世紀初頭から十七世紀半ばまで存続し、必ずしも制度が成立したわけではなく、むしろ十七世紀後半に長崎奉行就任者が、長期にわたり就任せず数年ごとに交代するという幕府の制度の変更こそが、各藩の長崎における聞役の制度化を招いたという結論に達した。 なお、この3年間の課題を引き継いだ研究を平成21年度より開始する予定である。
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