奈良興福寺大乗院の記録である『大乗院具注暦日記』の翻刻を進め、鎌倉後期の永仁7(1299)年(正安元年)・正安2年・正安3年正月・2月分についてあらあらの翻刻を行った。 2006年度以前より進めてきた鎌倉時代の守護注進状(刑事事件の発生を受けて守護が作成する報告書)に関する研究をさらに進め、本科研期間中の研究成果を含めて「検断沙汰と注進状」としてまとめた。この論文は2007年度刊行予定の『子文書学研究』への掲載が決定している。 2006年12月に奈良文化財研究所へ出張し、同所所蔵の写真帳より、2005年に新出史料として紹介された東大寺所蔵の「東大寺料国周防国文書集」の調査を行った。この調査に基づき、鎌倉時代の守護についての新知見を得た。この成果は現在、他の関連史料に基づく知見とともに論文にまとめており、2007年度中の投稿・掲載を目指している。 他に、2006年8月に京都府京都市所在の思文閣に出張し戦国大名毛利氏の家臣であった井上家の文書の、10月には岩手県奥州市水沢図書館に出張し鎌倉時代初めに陸奥国の留守職に任じられた留守家の文書の、11月には島根県江津市の中村家で石見銀山に関する同家所蔵史料の、調査撮影を行った。
|