3年計画の初年度である本年度は、研究計画にのっとり、古代日本において雅楽が宮廷諸儀式の場でさかんに奏された様子をとくに記録類(貴族たちの日記)を中心に収集し、それに基づき、儀式と舞曲の関連の解明を行う基礎作業として年表作成を試みた。古代における雅楽と儀式の解明に資する史料収集や調査、および分析のためのデータ化は適宜改変させながら今後も継続するものである。 研究実績としては、儀式と雅楽奏舞の密接な構造の見られる具体例として舞楽曼茶羅供の分析を行った。雅楽は仏教法会で必要な楽舞として伝来した経緯を持っており、古代雅楽を考えるうえで欠くことのできない構成要素を持っている。しかし、古代の史料からは具体的な様相が捉えにくいことから、試行的に法会の詳細な次第や楽人側からの史料が残される江戸期の法会と舞楽の分析を行い、東洋音楽学会で「江戸期の天野社舞楽曼茶羅供の構成」と題して発表した。また、今年度は研究内容に関わる催事(企画展・研究会)に恵まれたことから、現存する舞楽調査は最低限にし、(1)東寺宝物館「東寺法会の美」法会で使用された舞楽の蛮絵装束、(2)思文閣美術館「雅楽の変遷-古への音色を求めて-」康治3年(1144)の摺鼓胴・東大寺華厳会文書、(3)天理参考館「正倉院宝物のルーッと展開」漢代の楽人傭・新羅琴・乾漆伎楽面〔酔胡従〕、(4)奈良文化財研究所主催「宮中儀礼の復興による文化遺産の活用に関する研究会」等。これらの研究会や展示により儀式復元研究の方法のあり方、舞楽関係遺品の存在を確認閲覧できたことは古代雅楽研究を多角的に捉えるための大きな収穫になった。 来年度は今年に引き続き、雅楽関連史料収集を進めつつ、雅楽奏舞年表を充実させるとともに、現遺存物・舞楽伝承の調査にも視野を広げ、収集データを分析していく。
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