今年度は、昨年度に引き続き、関連記録類の調査収集を行った。また、これらの史料をもとに奏舞年表も継続して作成している。そして、これら奏舞と儀式に関する年表をデータ化している。これら3つの作業は、本研究上の大きな柱として来年度も継続して行っていく予定である。 研究実績としては、収集を進めている史料を、今までの自身の研究内容に反映させ、「抜頭」奏舞と儀式の関係を再検討した。これによって、抜頭奏舞が11世紀後半より変遷していくというのが、単に院政期と無縁ではないのではないかとの認識から、院政を始めた白河上皇の働きかけがあった可能性があろうと考えるようになった。この内容については、歴博『研究報告』に「古代の抜頭」と題して投稿した。また、平安時代中期に限定した儀式と奏舞の特徴を「平安中期の儀式と音楽」と題して芸能史研究会にも投稿した。 また本年度の調査は、奈良国立博物館で行われた「正倉院展」の開催にあわせ、奈良に出向いて行った。とくに、今回出品された「墨絵弾弓」は、古代日本および唐代の音楽・楽舞の形態や様子を伝えるものとして、自身の雅楽研究では大変注目してきたものである。これを間近に見学できたことは大変な収穫であった。この弾弓調査にあわせ古代日本で舞楽が奏されていた遺跡や寺院を訪ねた。平城京跡、大安寺、元興寺、薬師寺、東大寺、興福寺、氷室社などを巡り、出土遺物から雅楽奏舞の痕跡を求め、位置関係の把握、関連資料の調査を行った。本研究では、記録類を中心に関連資料を博捜してきたが、木簡や曼荼羅絵図などからも雅楽が奏されていることが確認され、今後の研究の糧として大いに参考になった。 今後とも学会発表や論文として、研究成果を発表していくとともに、最終年度には研究内容を研究成果書としてまとめて公表する予定である。
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