平成20年度は、本研究の要となる史料収集と初年度より作業を進めている『日本古代雅楽年表』の作成を続けた。年表の草稿は出来上がり、あとはデータ入力の残りを進めるだけである。この収集作成データにより古代日本雅楽の需要された場や奏された様相、雅楽の変遷過程などについても分析可能となった。今後も多角的に分析し、報告・執筆していく予定である。 今年度は研究成果の一端として、作成した史料年表データをもとに、密教法会での雅楽を分析し「密教法会と芸能」(『真言密教を探る』大正大学出版会、2009、印刷中)を執筆した。古代における法会は、舞楽四箇法要が古記録にも多く記されるが、密教法会はなかなか見出すことが出来なかった。しかし、年表作成をする過程で、密教法会で奏された雅楽の詳細な奏舞記録を修法次第の中に見出せたので、これらの史料を使いまとめたものである。こうした個々の演目の研究分析を『日本古代雅楽辞典』の各要素として構成し、雅楽実像の分析を今後も全演目にわたって進めていく。 また、今までの研究を新たな視点で見直して改訂した論考「古代の抜頭」を執筆し、今年6月14目(日)京都同志社女子大学にて開催される藝能史研究会大会での報告が決まっている。報告後は、発表内容を充実させ、論文として公表を目指している。内容は、雅楽の曲目である抜頭は、元来相撲節会のみで演奏されてきたが、十一世紀中頃から仏教法会など相撲以外の儀式でも演奏されるようになる、などの基礎的事実を明らかにした。従来までの研究は、今回明らかにしたような各曲目の基礎的な説明さえ行われてこなかった点で、自身の進めてきた研究は新しい古代芸能史を開拓する重要な研究であると考えている。
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