本研究の目的は、大阪相撲と都市社会大阪を構成する様々な集団や階層などとの関係を解明することを通じて、大阪相撲の集団としての特質や集団の内部構造を明らかにするとともに、大阪という都市社会の社会構造の一端を明らかにすることにあった。 研究期間の最終年度である今年度では、引き続き上記の問題を検討すると同時に、以下のような論点を発見することができた。 1大阪相撲と賤民身分集団との関係、 2勧進者としての相撲渡世集団、3大阪相撲と江戸相撲との比較である。1と2の論点は密接にかかわっている。大阪相撲は勧進相撲興行時に賤民身分集団に祝儀や通札(入場券)を配布していたことが判明したが、それは相撲渡世集団が勧進者として賤民身分と競合していたことを意味する。この勧進者としての性格は、近代になっても相撲渡世集団を規定し続ける。大阪相撲の場合、さまざまな慈善事業に関与しつづけた。例えば、日露戦後の貧民向け夜学校開設時には、開設資金募集のための慈善相撲を興行しているし、関東大震災時には相撲部屋は避難者の収容先の一つとして機能した。現在の福祉相撲が以上のような歴史的文脈で理解することができるのであれば、勧進者としての性格は現在まで相撲集団を規定しつづけているということも可能であろう。 3については、大阪相撲に関する研究で獲得してきた論点(市場社会との関係、賤民身分との関係、新地開発との関係など)が江戸相撲の研究にも一定程度有効であるということが判明した。今後は両者の比較も視野にいれて研究を進めていきたい。
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