近年の飛鳥・藤原地域における大量の木簡出土によって、木簡を単発ではなく、遺跡・遺構ごとに群として捉えることが可能となってきた。研究代表者は、奈良文化財研究所において、飛鳥・藤原地域から出土した木簡を直接手にとって整理する立場にある。平成18・19年度に引き続き、出土したばかりの木簡を、『飛鳥・藤原宮発掘調査出土木簡概報22』、『木簡研究30』などで速報的に報告した。 また、この3年間、整理・研究の対象として重点をおきてきたのが、平成13年度に藤原京跡左京七条一坊西北坪から出土した約13000点の木簡である。これまで『飛鳥・藤原宮発掘調査出土木簡概報16〜20』で速報的に報告してきたが、今回はこの基礎的作業を踏まえた上で、再度木簡の釈読・再検討をおこない、釈読可能な約2000点の木簡を、木簡図録『飛鳥藤原京木簡2-藤原京木簡1』としてまとめた。本書は、木簡全点を原寸大の高精細写真で示し、一部赤外写真を付し、最新の釈文と解説を提示したものである。また総説では、これらが衛門府の日常業務に関わる木簡群であることを明らかにするとともに、藤原宮・平城宮で出土した関連木簡の紹介をおこなった。 この3年間の研究成果のまとめてとして、期間中に発表した論文を今一度検討し直し、足りないところは新稿をもって補うことで、『飛鳥藤原木簡の研究』と題する書物をまとめた。III部12章からなるもので、A5版600頁ほどの分量である。平成21年度に出版する予定となっている。
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