| 研究概要 |
(1)昨年度に続き,中央アジア・新彊地域出土のウイグル語税役制度関係文書のうち諸種物件の供出命令文書(行政命令文書)86件について,既収集の写真複製・画像データに基づいてテキスト転写・英訳作業を継続中である。
(2)昨年度に調査したイスタンブル大学中央図書館所蔵古代ウイグル語税役制度関係文書を校訂・分析した研究論文を発表した。当該文書はこれまで類例のない形式の文書であり,土地の恩賜文書であろうと推測した。
(3)同じくイスタンブル大学に写真のみ所蔵される,チャガタイ=ウルス当主ドゥア時代発行のウイグル語免税特許状について,まずトルコ・アンカラで開催された第38回国際アジア・北アフリカ研究者会議で研究発表を行ない,ついで日本語で論文化した。当該文書は年代が特定できる点で貴重なウイグル文書であり,それに基づいて大元ウルスからチャガタイ=ウルスへという中央アジア支配勢力の交替を考察した。
(4)やはりイスタンブル大学に写真のみ所蔵されるウイグル語銀貸借契約文書について,トルコ人研究者と共同論文を投稿し,現在印刷中である。
(5)ウイグル語税役制度関係文書をとりまく歴史的背景に関わるものとして,中国甘粛省敦煌から発見されたモンゴル語文書を解読校訂の上,新彊・東トルキスタンから甘粛河西に至るウイグル仏教徒の巡礼活動を明らかにした。この点も,現在印刷中の論文で扱われている。
当初は,ロシア科学アカデミー・サンクトペテルブルク東洋学研究所における資料調査を予定し,そのための渡航旅費を計上していたが,諸般の事情から見送った。
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