研究概要 |
平成20年度は、次の課題を考察するための作業を行なった。 1. 第二次世界大戦中のインドにおける政治指導者の国際情勢に対する認識 2. 第二次世界大戦中のインド民衆レベルの戦争観・行動 3. 1, 2に対する国際社会(主にイギリス、アメリカ、日本)の反応 収集した史料分析により今年度の作業で明らかになったのは以下の通りである。 1. 第二次世界大戦中、インドの政治指導者の国際情勢認識は、(1)開戦〜シンガポール陥落まで、(2)〜ミッドウェー海戦まで、(3)〜終戦まで、の各時期に応じて変化している。しかし、その変化を貫くものは、国土防衛を第一義に据える姿勢であった。連合国、枢軸国が各々掲げる戦争の大義は殆ど影響しておらず、むしろ中立の道を模索する傾向が優勢であった。この傾向は共産主義者にも広く見られた。 2. 民衆レベルでは、日本による侵略の恐怖に晒されながらも戦争中に反英感情が一層助長された。このことが、インド人政治指導者の対連合国戦争協力を最終的に拒否する決定要因となった。 3. インド独立問題は、第二次大戦を機に国際問題化したが、アメリカはイギリスへの配慮から、日本はインド国内情勢への知識不足から、インド側の協力を勝ち得ることができなかった。 以上の内容は、来る5月に開催されるAsian Association of World Historians第一回大会で発表し、同大会議事録、論文として出版公開する予定である。
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