研究課題
本研究課題は、「社」という自然村レベルの基層社会における指導層である富農層の実態と、彼らの主導によって統合される「社」の構造を解明する手がかりを得ることを目的としている。特に着目するのは村廟を中心とする民間信仰とその担い手である富農層の動向の分析を通じた「社」の文化的社会的統合の実態解明である。上記の問題意識に基づき、本年度は2007年3月に、(1)太湖流域農村、すなわち江蘇省蘇州市、上海市青浦区、浙江省嘉興市における種々の地方文献の調査・収集と、(2)昨年度までに予備調査を行った江蘇省呉江市汾湖鎮下の村々において聞き取り調査を実施した。具体的な内容と成果はそれぞれ次のようである。(1)地方新聞の収集を中心とし、関連档案史料も併せて調査・収集した。地方新聞については、『呉江』『新盛沢』『清浦民衆』『(青浦)明報』などから、民国期の民間信仰や保甲制度、地方行政に関する記事を撮影乃至筆写し、所期の目的をほぼ達成することができた。档案史料については、呉江市档案館や青浦档案館において民国期の迷信打破運動や保甲制度、郷鎮行政関連档案、解放後の公私立小学校や私塾調査档案、私塾改造档案、土地改革や集団化に関する関する档案の所在を確認し、その一部を収集することができた。(2)予備調査を行った村々のうち、呉江市汾湖鎮北庫社区大長港村や金家〓社区梅湾村、同長勝村などにおいて、解放直後に村の幹部を務めた老人を中心に、解放前の社会組織や村落運営、民間信仰や廟会などの実態について聞き取り調査を行った。また、当地の民間信仰と密接な関係にある民間藝能である「宣巻」の老藝人や、寺廟の主催する宗教職能者数名からも聞き取り調査を実施し、村落構造を複眼的な視点から捉えるための手がかりを得ることができた。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (3件)
清末民国期、江南市鎮デルタの構造的変動と地方文献に関する基礎的研究(平成16~平成18年度科学研究費補助金(基盤研究B1)研究成果報告書)(太田出編)
ページ: 99-135
清末民国期、江南市鎮デルタの構造的変動と地方文献に関する基礎的研究(太田出編)
ページ: 221-224, 232-233, 236-241
中国-社会と文化 21号
ページ: 33-55