昨年度までで契丹(遼)の歴史にかかわる石刻史料、考古資料関連データ収集の基礎作業をひととおり終え、つづく時代である金・元代について同様の作業を継続しておこなった。これまでの作業をつうじて、契丹本地の内蒙古・遼寧とならび、とりわけ北京周辺に契丹時代の仏教遺跡や文物、碑刻資料が数多く残されていることをあらためて確認した。そのうえ、契丹に栄えた仏教寺院が、のちの金・元代にも繁栄し続けるものが多く、遼・金・元仏教を貫く明確な連続性を看取できることも分かってきた。これについては、北京地区の石刻史料をもちい、特定の寺院を舞台に、契丹から元代まで貫く仏教と国家・社会のかかわりを明らかにする論考を準備中である。 いっぽう、契丹をめぐる国際関係にかかわる研究も並行しておこなった。一〇〇四年の〓淵の盟の締結により、ユーラシア東方では、契丹と宋の二大国が平和共存関係を軸として多国が共存する国際秩序が確立するが、この両国のあいだを中心とする平和維持のしくみを明らかにするべく、この時代の外交文書や外交儀礼についての研究を開始した。今後、一三世紀のモンゴル登場に至るまで時代を広げて研究を進めるべく、契丹・北宋・金・南宋・高麗・西夏にわたって広範に関連史料を収集した。その成果の一部については、2009年3月の第九回遼金西夏史研究会大会において口頭発表をおこない、現在論考を準備中である。
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