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2007 年度 実績報告書

明清期における礼学と「社会における礼教の普及」に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 18720191
研究機関島根大学

研究代表者

佐々木 愛  島根大学, 法文学部, 准教授 (00362905)

キーワード律 / 中国思想
研究概要

「社会における礼教の普及」の検証・考察のため、今年度は明清律「殺死姦夫律」とその運用について考察を行った。殺死姦夫律には、夫は、姦通を犯した妻は姦通相手とともに殺害しても無罪と定められている。この法は貞節道徳の法的表現といえ、古代から概ね存在し、明律において明文化された。しかしながら本律は、皇帝専制体制という中国の国制とは矛盾する、突出した規定といわざるをえない。そこで本律を詳細に検討したところ、殺死姦夫律は基本的に姦夫殺害を主とした規定であり、不倫を犯した妻(姦婦)殺害を焦点としたものではないこと、かつ姦婦より姦夫に対する処罰のほうがより強いことが明らかとなった。また、本法の運用の実態について、『刑案匯覧』殺死姦夫に分類される288件について分析検討したところ、夫による姦夫姦婦殺害事件で無罪判決が出たのはわずか5件ときわめて例外的であることが明かとなった。それは殺害の「姦通発覚即時」「現場」という二つの適用条件を厳格に求めた結果であり、事実上本法適用の道はほとんど塞がれている。
現在の中国思想史研究では、明清の思想史を礼教の社会への浸透過程として描こうという提言があり、その際念頭におかれていることの一つが、女性への抑圧性が深まっていることである。しかし本研究からは、明清時代においてよく言及されるグロテスクなまでの女性への貞節性が、一律に要求されていたとは言い難い面があることが看取できた。また、本法が国制と矛盾するうえ、適用が現実に行われていないという現実からは、国法と道徳を一体のものとして考えてきた従来の研究姿勢は修正が必要なことが明らかとなった。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2008

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 不倫した妻は殺せるか?-殺死姦夫律をめぐって2008

    • 著者名/発表者名
      佐々木 愛
    • 学会等名
      第一回中国史学国際研究交流会
    • 発表場所
      上智大学
    • 年月日
      2008-03-15

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公開日: 2010-02-04   更新日: 2016-04-21  

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