1930年代に成立するとされるアメリカ型福祉国家体制の起源を、1910年代から20年代にさかのぼって国際(トランス・ナショナル)史の観点から検討するプロジェクトの初年度。当初の見通しにいくつかの修正が加わった。 ロックフェラー財団をひとつの柱と考えていたが、調査を進めるうちにむしろ浮上したのは、雑誌Surveyなどを拠点に1910年代に活発な動きをみせるソーシャルワーカーたちであった。当時かれらは単に社会福祉の実働部隊といった範疇にとどまらない大胆な活動をみせている。とりわけ一次大戦を契機にヨーロッパ諸地域との比較がしばしばなされ、アメリカにおける社会政策への影響もうかがえる。その核心部分はいまだ明らかでないが、継続調査に値する。 加えて、同じく国際史の観点から注目すべきは、女性参政権運動を支持する人々である。その運動が狭義の参政権運動にとどまらないのが見て取れる。政体のあり方が、ここでもまたくり返し国際比較されながら論じられる。 ニュージーランドとアメリカとの関係はいまだ明確に見えてこない。ただし、雑誌などでの言及は少なくない。Henry Demarest Lloydをはじめ、有力な社会改良思想家が熱心な報告を残しているのも確認できる。それらの影響、そしてまたニュージーランド側からの史料も、検討の対象に含むべきであろう。関連して、英帝国研究におけるニュージーランドを含むトランスナショナル・ネットワークについても調査をはじめておきたい。
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