1930年代に成立するとされるアメリカ型福祉国家体制の起源を、1910年代から20年代にさかのぼって国際(トランスナショナル)史の観点から検討するプロジェクトの最終年度。 公衆衛生をひとつの焦点に各国が社会政策を競うように展開する一方で、アメリカではそれが国内政治における主導権争いと干渉しあって容易には進みゆかない過程があきらかになってきた。その成果の一部は、日本西洋史学会において発表の機会を得た。 ニュージーランド国立図書館(Alexander Turnbull Library)での調査は有意義であったと同時に、課題を残した。アメリカ側からではまったく辿れていない史料から浮かび上がるのは、いわば英帝国の両端をなす国としてアメリカ合衆国とニュージーランドが並置されていくこと。福祉から女性参政権におよぶ社会政策の状況が注視され、HenryGeorgeをはじめとするアメリカ側の動向は想像以上によく読まれている。ただし、ロンドンとも結びつき当地ウェリントンで発行される史料群の全容の予備調査はアメリカを起点にしていては不十分であった。反省とともに、次の研究計画への足がかりを得た。
|