本研究の目的は、ブルゴーニュ公宮廷を基軸とする政治・文化ネットワークを解明することにあるが、2年目の平成19年度は、前年度よりの資料・文献収集を継続するとともに、宮廷関連者のデータベース化の基礎となる史料読解に取り組んできた。また、一つの大きな成果は、時宜を得てブルゴーニュ宮廷史研究の中核機関である在パリ・ドイツ歴史研究所における国際研究集会「ブルゴーニュ宮廷とヨーロッパ。一つの文化モデルの射程と限界」に参加できたことである。3日間(H19.10.9-11)に及ぶ同研究集会はヨーロッパ各国から研究者を糾合し、様々な議論を通じてブルゴーニュ宮廷史研究の可能性を大いにクローズアップした。何よりもWパラヴィッチーニ所長の退任を記念して同研究所グループの十数年来の成果が総括された点は特筆されよう。この退任によって、ブルゴーニュ宮廷史研究の求心力が失われる虞もない訳ではないが、これまでの成果が軒並み刊行される予定もあり、一つの画期とも言える時期に来ている。また、この研究過程において、宮廷が実際どこにあったかという点でブルゴーニュ公宮廷の考古学的追跡調査の必要性を認識し、関連する建造物の保存(現存)状況や資料収集にも継続して配慮してきた。 さらに研究作業ではサラン財務官会計簿にみられる宮廷・家政支出に注目し、史料論的分析から報告を行った。現在、データ取り込みの途上であるが、研究代表者の所属異動のため若干の遅れもある。ただ、地道な作業であるので、できる限り効率よく早急に宮廷・家政関係者のリストアップ化を行い、まとまった成果を世に問いたいと考えている。
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