1)既刊の報告書に基づいて、西日本の縄文時代後期から弥生時代前期にかけての遺跡のデータベースを作成した。遺跡の国土座標、時期(土器編年に基づいて細分)、立地、遺構の有無と種類をエクセルに入力した。入力作業については、岡山大学の学生を雇用し、謝金を支払った。本年度で中国地方のデータベース化はすべて終了した。 2)縄文時代の古環境や生業に関するデータを得るため、岡山県玉野市の出崎半島で小規模な発掘調査を行った。作業の一部は岡山大学の学生を雇用して実施し、謝金を支払った。縄文時代後期の遺跡の状況を確認することを目的としていたが、結果的に縄文時代前期の泥炭層を伴う遺跡が確認された。植物珪酸体などの自然科学的分析、および堆積学的な分析については、専門的知識をもった研究組織・研究者に依頼し、縄文時代前期から近世にかけての古環境変化についてのデータを得た。特に、縄文時代前期の海水準上昇に際して、6500CalBCごろに一時期停滞期があり、そのときに沿岸部に集落が形成されている状況を推定することができた。発掘調査の成果については今年度報告書を刊行した。 3)入力が済んだ遺跡のデータについては、地理情報システムのソフトウェア(IDRISI)を用いて解析し、地域・時期ごとの立地の特徴や傾向について分析を行った。その結果、中国地方における地域ごとの遺跡の増減のダイナミックな様相を把握することができた。また、遺跡立地の時期ごとの変遷とともに、同じ時期における立地の多様性についても把握することができた。
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